9月25日、厚生労働省社会保障審議会の第49回介護保険部会が開催され、委員を務める河原四良NCCU顧問が出席しました。
今回の議題は『費用負担の公平化について』で、「一定以上所得者の利用者負担について」「補足給付について」「1号保険料の低所得者軽減」に対し議論が交わされ、河原顧問も委員としての立場から発言しました。
「費用負担の公平化」について、厚労省による案では、介護保険制度の持続可能性を高めるために、現在は所得に関係なく1割負担となっている利用者負担を、一定以上の所得者については2割負担に見直すとしています。
その具体的な所得基準として次の2案が提示されました。
(案1)被保険者全体の上位約20%に該当する「合計所得金額160万円以上」
(案2)住民税課税者である被保険者のうち所得額が上位概ね半分以上に該当する「合計所得金額170万円以上」
この案に対し、河原顧問は「一定以上の所得がある利用者に負担をお願いすることは、制度の持続性や世代間・世代内の公平性の観点からいっても当然導き出される結論だと思う」と理解を示した上で、次のように意見しました。
「負担が上がることで利用控えも考えられるため、国は緩和策も含めた対策案を考えるべきである。一つの対策として、これから8%、10%と上がる消費税のどの程度を介護ために使うのかなど、負担が2割になる利用者が少しでも納得できるような具体的プランを積極的に示すことが重要ではないか」。
また、厚労省が示した『一定以上所得者』の『一定』の水準案に対しては、「高齢者世帯の収支状況等の詳細なデータから設計されたもので、理論的には理解できる」と評価しながらも、「数値としては、大変厳しいと考える」と発言。
「消費税が予定どおり引き上げられた場合、消費支出増や介護保険料の引き上げ等から設計上の数字通りにならないことが懸念される。世代内の公平という視点では、具体的金額基準は別として、被保険者全体からの比率から導かれた(案1)の考え方にするべきだと思う」と述べました。
介護保険施設等に入居する低所得者を対象とした補足給付(食費・居住費の補助)については、現行では本人の年金収入と所得のみで評価していますが、厚労省は今回、預貯金等の資産や配偶者の所得も踏まえた評価とする案を示しました。
これについて河原顧問は、「高齢になる前から生活を切り詰めて懸命に貯蓄をした方もいる一方で、その反対の方もいる。また自己申告はトラブルも考えられ、市町村の負担が相当なものになることなどを考慮すると100%は支持しにくい」と感想を述べました。
さらに、リバース・モーゲージ(自宅を担保に老後資金を融資する制度)の考え方に対し、「介護保険の財源を一時的に用いた事業で後で清算ということであれば、まだ納得できる。しかし、補足給付は食費と居住費に対しての『福祉的な給付』であり、対象者の範囲に制限を加えても在宅サービスとの不公平感は解消されない。従って、介護給付費以外で対応されるべき問題ではないか」と指摘しました。
この質問に対し、厚生労働省事務局は「ご指摘のとおりの問題もあるので、今後の検討課題と捉えている」と回答しました。
続いて、第1号保険料の負担を軽減するため、低所得者の負担割合を更に引き下げることや、所得段階の多段階設定などの案が示されました。
河原顧問は、「現在の応能負担を更に多段階にすることは、低所得者対策だけなら支持できる。しかし、多段階になるということは比較的所得の高い方には負担増になることが考えられる。介護とは無縁な元気高齢者に対する『地域事業』の具体的なプランを保険者が示せなければ、負担が重くなる可能性のある第1号被保険者の反発にも繋がるので、慎重な打ち出しが必要と考える」と意見しました。
次の介護保険部会は10月2日に開催される予定で、「都市部の高齢化対策に関する検討会報告」などについて議論されます。
今回の介護保険部会のテーマはマスコミの関心も高く、多くの報道関係者が取材のため来場しました