11月25日「第69回社会保障審議会介護保険部会」が、ベルサール秋葉原(東京 千代田区)で開催され、陶山顧問が出席しました。
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≪議題≫
1.とりまとめに向けた議論
2.その他
2月にスタートした今年度の「介護保険部会」は、主な検討事項とされていた「地域包括システムの推進」、「介護保険制度の持続可能性の確保」について、いよいよ取りまとめの議論に入りました。中でも「負担のあり方」は、第61回、67回に続き三巡目となり、介護保険制度と医療保険制度の整合性を中心とした議論となりました。
陶山顧問は、利用者負担のあり方については「高額介護サービス費の見直しは、前回改正で2割負担とされた利用者に短期間で再び負担を強いることは問題であること」、また、取りまとめについては「人材の確保」に焦点を絞り、介護従事者の処遇改善の必要性は、今や「介護保険制度の持続可能性」に係わる課題であると問題提起し、次の発言を行いました。
【利用者負担のあり方】<要約>
高額介護サービス費(介護保険)と高額療養費(医療保険)を同列で議論することは無理(ほとんど生涯継続して介護給付の対象となる利用者と、病気が治るまでの間、受給する医療給付)があります。そして高額介護サービス費を引き上げることは負担が長期化することにつながります。現在、社会保障制度全般にわたり様々な負担増の項目が議論されていますが、制度間の調整が必要だと考えます。守備範囲を超えた話ではありますが、ひずみは、弱いところに溜まり違う問題を引き起こすことが懸念されます。
利用者負担は、負担できる人が負担するという応能負担は理解しつつも、平成27年度に2割負担の対象となった利用者は、この高額介護サービス費の見直しで、短期間で再び引き上げが行われることとなります。(「参考資料1」 17ページの2割負担の施設サービスの受給者は、ほとんどのクラスで自己負担限度額に張り付く)
また今後、医療保険部会で議論されている新たな高額療養費の見直しに直接影響を受け、利用者負担の限界を超えることにもつながります。
以上の意味から、高額介護サービス費については今回の見直しを回避し、社会保障費全体の議論を十分に行った上で改めて検討することを提案します。
【介護保険部会の見直しに関する意見】<要約>(資料3「介護保険制度の見直しに関する意見(素案)」22ページ23ページ参照)
・介護保険部会は、そのスタートした時の趣旨から介護保険制度に関する課題及びその対応方策等について議論することを目的に設置されていると認識しています。
しかし、介護人材の確保については、ロボット、ICTの活用以外「介護人材の処遇改善」には一切触れられていません。したがって、この介護人材の確保については生産性の向上や業務効率化の観点だけでなく、介護従事者の処遇改善に幅広い記述があってしかるべきと考えます。
具体的には、「介護従事者の人材確保の観点から、介護業界の魅力を一層高める基盤として、介護従事者の処遇改善や潜在介護人材の確保等について平成29年度の報酬改定だけでなく平成30年度介護報酬改定の際にも検討することが適切である」との考え方を意見の中に追記していただきたく希望します。
なお、私どもの調査では、介護従事者の切なる思いは処遇改善であり、特に「賃金体系の構築」、「一時金の水準」にあることが明確になっており、処遇改善に一層の支援が必要だと考えます。
・次に、ロボット、ICTに係る事業者への対応ですが、事業者は零細が多く高額なロボットの導入に掛かる費用を拠出することは、たいへん困難なことと考えます。
そこで介護報酬や人員・設備基準等の見直しの際には、事業者が導入できる水準の支援を行う必要があります。また、これまでにもご意見申し上げていますが、ICTの導入についてもインフラの整備(共通アプリの開発)等も範疇に入れた支援が必要です。
・介護技術の標準化である介護人材の専門性や能力の向上からの観点ですが、介護人材の育成について、地域で事業者どうしが協力しながら介護技術の標準化を目指している事例があるとのこと。また、「介護人材の育成には介護業務の手順等を明確にし、介護職員の不安を解消するとともに、人材育成につなげていくほか、国においても各施設・事業所における人材育成の取組が推進されるよう必要な支援を行うことが適切である」との意見がありますが、このような好事例を横展開するためにも国や都道府県が積極的に関与し、教育人材の派遣及び機材(教育ビデオ、教育教材等)の開発を支援することが必要と考えます。
・最後になりますが、今回の介護保険部会は「地域包括ケアシステムの推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」について論議してまいりましたが、「介護人材の確保」はいまや「地域包括ケアの推進」だけの括りではなく「持続可能性の確保」にも大きくかかわる環境になってきていると思います。その趣旨を込めた意見書となることを切に願うものです。
以上