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とりくみ Labor policy / Political action

法改正に向けた議論が活発化 第128回介護保険部会 染川会長発言

2025年11月13日掲載

11月10日(月)、「第128回社会保障審議会介護保険部会」が虎ノ門グローバルスクエア(東京都 港区)で開催され、染川会長がWEBで出席し、意見を述べました。

●配置基準の緩和を前提とした特例サービス範囲拡大に反対
ひとつ目のテーマ、『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等』では、第124回介護保険部会の議論を踏まえ、3つの地域区分のひとつ「中山間・人口減少地域」についての論点が示されました。
最初の論点では、特例介護サービスに「中山間・人口減少地域」を新たな類型として設けることが提案されました。
特例介護サービスは、介護保険の対象にならない場合でも、市町村が認めた場合に給付となる仕組みで、現状の“基準該当サービス”では一部の居宅サービスのみ、“離島等相当サービス”では居宅サービスと一部の地域密着型サービスを対象としています。
提案された新たな類型では、居宅サービスや地域密着型サービスに加え、施設サービスなども対象として、それぞれの人員を融通することを念頭とした案が示されました。
しかしながら、いずれもICTの活用などを前提としながらも、“管理職や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件を緩和する”考え方が盛り込まれています。

これに対し、染川会長は、「現場の実態として、現状では介護の質を確保することが困難なことから、現行運営基準を上回る人員配置で対応をしている事業所がほとんどである。サービス・事業所間で連携したとしても、そのことが介護現場の直接の負担軽減にはつながらない。こうしたことから、基準緩和を前提に施設サービスなどを特例サービスの範囲には含めるべきではない」と反対意見を述べました。

●月単位の定額報酬は、利用者と事業者の利益が相反する構図を生む
2つ目の論点では、「中山間・人口減少地域」の事業者が安定的な経営を行うために、利用に応じて算定する現行の出来高報酬とは別に、月あたり定額の報酬を算定する“包括報酬”を設ける案が示されました。

染川会長は、「仮に“包括報酬”とした場合、利用が少なければ事業者のメリットである一方で、利用者からみればデメリットになる。利用が多い場合には、その反対となり、事業者と利用者の利益相反の構図が常に存在する形となる。
またサービス内容や量は変わらないにも関わらず、利用料に大きな差が生じることで、介護保険制度の公平性、公正性を損なうことが懸念される」と問題点を指摘。
さらに、「事業として成立するか否かが問題であり、移動時間等にかかるコスト、人材確保可能な賃金水準等も考慮したうえで報酬の在り方を見直すことが重要」と強調しました。
そのうえで、「特定地域の利用者だけへの著しい負担増加を抑制するために、財源として調整交付金の機能強化や、新たな交付金の創設、地域医療・介護総合確保基金の拡充や財源構成の見直しも含め、幅広く検討する必要があるのではないか」と意見しました。

●総合事業の見直しが進まない背景には低い報酬単価の問題がある
2つ目のテーマ、『地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業)』では、地域包括ケアシステムの各市町村の課題が論点に上がりました。
各市町村では、依然として従前相当サービスの割合が最も高いことや、25%が「取り組む予定がない」としているなど、総合事業の見直しが進んでいない現状が示されました。

染川会長は、現場の声をもとに、「人材不足で従前相当サービスすら継続して取り組むことが困難」と述べ、その背景には報酬の問題があると指摘。
「介護保険による要介護者へのサービスと同様の対応をしても報酬単価が低く抑えられているとの声も多い。総合事業は保険者ごとに予算上の上限があるが、その設定は高齢者の伸び率を指標としていることから、昨今の物価や人件費の上昇を反映した報酬単価を設定できていない。現状の報酬単価のあり方を見直すべき」と訴えました。

●『囲い込み』等の対策は、有料老人ホームに限らず範囲を拡大するべき
3つ目のテーマ『地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)』では、有料老人ホームについての課題と検討内容が示されました。

染川会長は検討内容に概ね異論はない、としつつも、次のように苦言を呈しました。
「これらの対策を講じる必要性が生じた背景にある『囲い込み』等の問題は、有料老人ホームに限らずサービス付き高齢者向け住宅等でも共通している。
対策を行う対象は、介護保険サービスを利用している入居者がいることから、サービス付き高齢者向け住宅等も範囲に含めるべき」

同部会では、引き続き議論が行われます。NCCUは、各種調査結果や組合員の皆さんの声をもとに発言を続けていきます。

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今回の資料は第128回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省に掲載されています。

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