12月9日(金)、厚生労働厚省にて、加藤勝信厚生労働大臣あてに『臨時介護報酬改定・介護従事者の処遇改善策の拡充に関する要請書』を提出。物価上昇などによって苦境に立たされている介護事業所のための臨時の介護報酬改定と、介護従事者への処遇改善策の拡充を求めました。
『物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策』が2022年10月に閣議決定され、岸田文雄首相は「最優先すべきは物価上昇に負けない賃上げ」とし「来年春闘が成長と分配の好循環に入れるかどうかの天王山だ」との認識を示しています。11月10日には政府の『新しい資本主義実現会議』が開催され、「構造的賃上げ」の実現に向けた取り組みを進める方針を示しました。
その一方で、介護業界では、長引く新型コロナウイルス感染症による利用控えによって、事業収入が減少している事業者が多くなっています。さらに、物価上昇によって備品や光熱費等にかかる経費が増加しているものの、介護事業所は介護報酬によってサービスの価格が決められているため、他の業種のように増えた費用を価格に反映することができません。そのため、苦境に追い込まれている事業所が全国に拡大しています。東京商工リサーチによると、2022年1月から9月の間に倒産した介護事業者の数は全国で100件に上り、前年の2倍近く、年間では過去最悪のペースになっています。
そのような状況にあっては、政府が掲げる「物価上昇に負けない賃上げ」が社会全体として実現できたとしても、介護従事者の賃金を上げることは非常に困難です。すでに全産業平均と比べても介護従事者の賃金は、月額でおよそ4万2,000円、年収では97万円も低く、その格差はさらに拡大してしまうことが懸念されます。
こうした背景のなか、NCCUはUAゼンセン松浦昭彦会長との連名で、「臨時の介護報酬改定」と、「介護従事者の処遇改善策の拡充」を厚生労働大臣あてに要請しました。
この日、NCCU染川朗会長、村上久美子副会長、島卓事務局長は、堂込まきこ参議院議員(UAゼンセン組織内議員)とともに、厚生労働省政務官室にて、加藤厚労大臣あての要請書を畦元将吾政務官に手渡しました。
●「臨時の介護報酬改定」について
畦元政務官は「介護事業者が物価高の影響を利用者に転嫁しにくい業種であると承知している。先般、物価高騰に対する支援策として創設された6,000億円の『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』において、自治体に対して推奨事業メニューのひとつとして、介護事業所に対する支援を掲げている。厚労省としては、すでに取り組みを進めている自治体の事例を共有するなどして、繰り返し活用をお願いしてきた。引き続き自治体において交付金を活用した介護事業所の負担軽減の取り組みが進むよう、取り組んでいく」と回答しました。
これに対し、染川会長は「一部の自治体ではそうした交付金を利用して支援をいただいていることは承知している。しかし、NCCU組合員の働く事業所を例にとると、光熱費の増加が著しく、そうした支援で助かった、というレベルには届いていないのが実態であり、さらに手厚くするよう考えていただきたい。また、これは全国共通の課題であり、交付金による支援を行っている自治体と、そうでない自治体の差があるため、自治体まかせにするのではなく国が先頭にたってやっていただきたい」と伝えました。
●「介護従事者の処遇改善策の拡充」
畦元政務官は、「これまで累次の処遇改善に取り組んでおり、更なる処遇改善に取り組むため、本年2月より現場で働く方々の給与を3%引き上げるための措置を講じたところ。まずはこの処遇改善の措置が介護職員の給与にどのように反映されているか等を検証することが重要と考えている。そのうえで今後も公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、費用の使途の見える化を行いながら、現場で働く方の処遇改善や業務の効率化、また負担軽減を進めていきたい」と答えました。
染川会長は「2月に実施した補助金の効果を見極めるという以前に、全産業平均と比べて大きな格差があるため、3%の賃上げで9,000円水準となる金額が行き渡ったとしても、その乖離は是正されないということは容易に想像がつく。他の産業は価格に転嫁してでも賃金に反映するという流れにあるので、人材確保という意味でも3年に一度の改定を待たずに対応をお願いしたい」と訴えました。
さらに村上副会長は「介護業界には若い人が入ってこない。そのため介護職員の高齢化がどんどん進んでおり、このままでは介護産業がなくなってしまう可能性がある。若い人が将来設計を描くことができるような処遇改善を」と強調しました。
今回の要請内容については、すでに報告のとおり、NCCU政治顧問とも共有し、実現に向けて連携していくことを確認しています。
NCCU政治顧問に「臨時介護報酬改定」「介護従事者の処遇改善」に向けた協力を要請
NCCUは、今回の要請の実現に向けて各方面に働きかけ、引き続き取り組んでいきます。
◆要請書の全文は画面下のPDFでご覧になれます◆
(左)畦元政務官に要請内容について訴えました。
(右)要請の後、記者報告を行いました。