4月24日、民主党 厚生労働部門会議が参議院議員会館で開催され、産業競争力会議における「外国人技能実習制度」の見直し議論についてのヒアリングが行われました。
同会議からの依頼を受け、NCCUから陶山浩三会長、染川朗事務局長、村上久美子政策部長が出席。また内閣参事官をはじめ、厚生労働省、法務省、経済産業省の担当者等も参席し、民主党議員をはじめとする出席者からの質問に答えました。
このところの報道にあるように、経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議は、建設分野などに限られている外国人技能実習制度を見直し、介護分野などへの拡大を提案。安倍首相も「外国人活用の仕組みについて検討を」と指示するなど、途上国からの技能実習生を介護分野に受け入れるという考え方がにわかに浮上しています。
民主党の要請に応え、介護従事者の労働組合として意見を述べました
こうした議論が進んでいることについて、陶山会長は次のように発言しました。
「外国人技能実習生の受け入れは、厚労省が進めている『介護の質』の担保に逆行する。労働条件の劣悪化を招く懸念もあり、仮にそうなれば日本人の介護従事者はますます減少するだろう。
介護保険制度のスタートから14年経つが、介護報酬はこの間に2度引き下げられ、介護従事者の処遇改善はほとんど進んでいない。アベノミクス効果で大手企業はベースアップがなされているが、介護従事者にかかわるベースアップはほとんど行われていないのが現状だ。外国人を頼る前に、まずは適正な報酬を支払い、処遇改善を進めて多くの人材が流れ込む業界にするべきではないか。
現在、EPA(経済連携協定)によってフィリピン等から介護福祉士候補を受け入れているが、『介護の質』という点では、外国人技能実習制度ではなくEPAの受け入れ条件緩和を検討した方が質の担保につながると考える」
続いて村上政策部長が発言。いくつかの質問を挙げて内閣参事官からの回答を求めました。
まず、外国人技能実習制度の目的について、「この制度は、開発途上国の経済発展を担う人の育成を目的としたものであり、人材不足を補うために技能実習生を受け入れるのは、そもそもの目的とは違うのではないか」と質問。
参事官は「技能実習制度の目的は、まさに相手国の経済発展に貢献することであり、その上で相手国のニーズがあれば介護分野への受け入れを考える、との認識である。国内の人材確保を目的とした制度でないことは十分認識している」と回答しました。
また、村上部長は、厚生労働省が『質の向上』を積極的にうたい資格の見直しなども進めていることに触れ、「今回の技能実習制度の議論は、厚労省が目指す『質の向上』とは齟齬をきたす内容なのではないか。また、外国からの受け入れの前に、国内の潜在介護福祉士や潜在ヘルパーを掘り起こすことが先ではないのか」と質問。
これについて参事官は「介護サービスの質の向上・確保は大変重要であり、これを大前提として、ゆくゆくは厚労省と慎重な議論と検討をしたいと考えている。また、潜在介護福祉士をまず使うべきとのご意見については、産業競争力会議の民間議員からも同様の提案がされており、ご意見を踏まえて政府内で検討していきたい」と回答しました。
今回、法務省担当者は、外国人技能実習制度は“人手不足を理由とした活用はできない制度”と明言しました。しかし報道によると、政府は、6月にまとめる新成長戦略に外国人材の活用を盛り込む方針とのこと。今後の議論を十分に注視する必要があります。
陶山会長と村上政策部長は、外国人技能実習生受け入れによる「介護の質」や「労働条件」への影響等に懸念を表明しました