9月29日(月)に「第125回社会保障審議会介護保険部会」が虎ノ門グローバルスクエア(東京都 港区)で開催され、染川朗会長がWEBで出席しました。
今回示された3つの論点のうち、染川会長は『地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備』、『持続可能性の確保』について発言しました。
●サービス提供体制のあり方の検討・議論には訪問介護の現状把握も必要
最初の論点、『地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備』では、2040年に向けて、地域の実情に応じたサービス提供体制や支援体制の構築について議論されました。
その方向性として、市町村だけでなく「都道府県も2040年に向けた中長期的な推計を実施」すること、また、そうした推計を踏まえ、「地域での2040年に向けたサービス提供のあり方を都道府県・市区町村や関係者間で議論する仕組みを設けること」が提案されました。
これについて染川会長は、「深刻化している介護従事者不足、それに起因した介護事業所の不足を補うためにも、市町村を超えて広域的な議論をする仕組みには賛同する」と述べました。
一方で、示された「2040年に向けた中長期的な推計」のデータの項目に、訪問介護に関して明記されていない点を指摘。
「NCCUが行った調査では、2024年4月以降の1年間で、訪問介護員の不足によりサービス提供を断ったことがあると回答した訪問介護事業所が89.4%。訪問介護事業所の人手不足により必要とされるケアプランが組めないと回答したケアマネジャーが68.3%にのぼる。これを踏まえると、特養の入所待機者の把握のみならず、在宅介護で必要な介護サービスが提供されていないケースも数値で把握し、対策を講じていくことが必要」と求めました。
●持続可能性の確保の論点には人材確保の視点を
『持続可能性の確保』についての論点では、給付と負担のあり方について議論されました。
利用者負担割合の2割負担、3割負担の対象者を拡大することについて、過去の給付と負担の議論を踏まえたうえで、閣議決定された『骨太方針2025』から次の2点が示されました。
・2040年を見据え、現役世代の負担を軽減しつつ、年齢に関わりなく能力に応じて負担する「全世代型社会保障」の構築が不可欠。
・介護保険制度における給付と負担の見直しに関する課題について、2025年末までに結論を得られるよう検討する。
染川会長は、「以前の議論では、いわゆる”総合課税の対象となる所得”を捉えて判断する方向性だった。しかし、負担割合を引き上げる基準をその要素だけで判断すれば、介護を必要とする高齢者が過度に利用を抑制し介護度が悪化するなどの悪影響が懸念される」と述べました。
そのうえで、「能力に応じた負担を判断する基準は、分離課税の対象となっている利子所得や配当所得、金融資産の保有状況なども含めて、総合的に判断することが必要」と主張しました。
さらに、論点に“現役世代の負担を軽減”とある点について、「介護従事者も現役世代だ」と強調。「介護従事者の賃金は、全産業平均賃金より、ひと月あたり8万円以上、年間で約100万円も低い現状がある。全体的な負担軽減のためにこうした現状を放置しては、介護保険制度は人手不足により持続不可能となる」と述べ、『持続可能性』の論点に人材確保の視点が欠けている点を指摘しました。
そして、「このことは、持続可能性に影響する重要な要素。持続可能性の確保の中で重点的に議論し対策を検討していく必要がある」と要望しました。
引き続きNCCUは、各種調査結果や組合員の皆さんの声をもとに発言を続けていきます。
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今回の資料は第125回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省に掲載されています。