7月28日、日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、2024年度の介護報酬改定にあたって介護報酬の引き上げや設計の簡素化などを求める要請書を厚生労働大臣あてに提出しました。
この要請は、NCCU染川朗会長とUAゼンセン松浦昭彦会長の連名によるもので、介護従事者が安心・安定して永く働き続けることができる介護報酬の実現に向け、次の4項目を求めたものです。
要請内容
1.介護報酬の引き上げを行うこと
2.介護報酬は簡素で納得性のある設計と、改定ルールを明確にすること
3.「介護職員処遇改善加算」等の仕組みを再構築すること
4.介護従事者の確保と定着のための施策を推進すること
※要請書全文は本ページ下部のPDFをご参照ください
この日、NCCU染川朗会長、村上久美子副会長、島卓事務局長は、UAゼンセン組織内議員の川合たかのり参議院議員、田村まみ参議院議員とともに厚生労働省を訪ね、本田顕子政務官に要請書を提出しました。
染川会長は、「介護業界の求人倍率は他の産業と比べものにならないくらい非常に高い状態が続いている。特に訪問介護は、全国的には15倍を超えている。『新しい人がこれだけ来ないのであれば、今働いている人がいなくなったら事業をたたむしかない』という事業者の声も多い。私たちの組合員が勤務する事業所でも法律で定められた人員を確保できないために2つの事業所を1つにして何とか維持するといった統廃合がひんぱんに起きている。これ以上事業所が閉鎖されることになると、サービスを受けられなくなる高齢者が多く出てくると私たちは危惧している。
加えて、ここ2、3か月、離職者が増えつつある。過去にも景気が良くなると介護の産業から働く人が離れていく、逆に景気が悪くなると入ってくるという側面があったが、コロナ禍を脱し、他の産業の経済活動が正常化したことにともなって私たちの産業から人が抜けていくという現象が少しずつ確認されている。ぜひ、現場の声に耳を傾け、厚生労働省としても検討してもらいたい」と求めました。
続いて村上副会長が要請の4項目を説明。特に「1.介護報酬の引き上げを行うこと」について、「今年の春闘は社会的には非常に高い賃上げ率となり、全体で3.58%と言われている。一方で介護業界は、コロナウイルスの影響と物価高騰で、非常に厳しい経営状況のために賃上げを実施できない法人がある。NCCUの賃金交渉では、最終の結果は出ていないが、現時点の有額回答で1.7%にとどまっている。特に問題なのが、半数以上の組合員は賃上げがゼロであること。これが非常に問題だと思っている。介護の仕事は、社会的役割と専門性からも全産業平均と比べてそん色ない賃金水準まで確保されるべき。ぜひ介護報酬の引き上げを行っていただきたい」と訴えました。
これを受けた本田政務官は「介護の処遇改善は、令和3年度の補正予算、令和4年にもしているが、実際の現場では実績があがっていないという声はいただいている。この要請を踏まえて介護報酬については検討を進めていきたい」と述べました。
さらに介護報酬の明確化にも触れ、「介護事業経営実態調査を実施して、介護報酬については人件費を含めた平均的な額を勘案して想定している。令和6年度の介護報酬改定については、物価高、賃金上昇のなか、7月25日の閣議決定で医療と介護の賃金は別枠で事項要求していくことになった。本日いただいたところも踏まえて、厚労省としてもしっかりと財務省に主張していく」と述べました。
今回の要請をさらに後押しするため、NCCUでは、現在『50万人署名活動』に取り組んでいます。2024年度の介護報酬改定が、介護業界で働くすべての人の処遇改善につながるよう求めるもので、寄せられた署名はあらためて厚生労働大臣への要請として提出する予定です。