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NCCU政策コラム Political policy

【政策コラム】年次有給休暇について

2023年12月26日掲載

◆年次有給休暇とは

 一定期間継続勤務した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減らされない休暇のことを言います。
 業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区別なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。労働基準法第39条)
 年次有給休暇の呼び方には、「有給休暇」「年次休暇」「年休」「有休」など様々あります。

◆年次有給休暇は何日付与される?

 年次有給休暇が取得できるのは、
・雇われた日から6ヶ月継続勤務をした人
・全労働日※18割以上出勤している人
です。
 6ヶ月継続し勤務をすると下記の年数により、年次有給休暇の日数が基準日※2に付与されます。

また、週の所定労働日数が4日以下で、週の所定労働時間が30時間未満または1年間の所定労働日数が48日~216日までのパート等で働く人については、所定労働日数に応じて日数が付与されます。

 法人によっては、6ヶ月経過していなくても付与されたり、付与される日数が違う場合がありますので、ご自分の働いている法人の就業規則に年次有給休暇の項目が必ずありますので、ぜひ確認してみてください。パートだから等の理由で年次有給休暇がないということは決してありません。

※1全労働日とは:労働契約上労働義務が発生している日で、就業規則等で定められている休日以外の日のことをいいます。
※2基準日とは:労働基準法では、個人を雇い入れた日から6ヶ月後のことをいいます。個別に異なる付与日になると、管理が複雑になるため法人が基準日(付与日)を年始(1/1)や年度初め(4/1)などに統一している場合があります。

◆年次有給休暇の取得時季の決定について

 年次有給休暇の取得に関しては、労働者が請求した時季に休みが取れることになっています。(労働基準法第39条5項)そして休暇の取得理由に関しても、法人は干渉してはならず、理由を原因に休みを与えないこともできませんので、労働者が自由に利用して良いことが原則となっています。
 ただし法人は、「労働者から請求された時季が“事業の正常な運営を妨げる場合”には、他の時季に変更できる」ことになっています。これを『使用者の時季変更権』といいます。これだけ見ると「じゃあ人手不足の時は会社から勝手に有休を取得したらダメだと言われるんじゃないか」と思われるかもしれませんが、単純に人がいないだけでは変更権は認められず、繁忙期や、他の労働者と休暇請求日がかぶってしまい働く人がいなくなってしまうなど客観的な根拠があり、特別な事情がある場合でないと変更権は認められていません。

◆「年5日の年次有給休暇の確実な取得」について

 2019年4月から「働き方改革関連法案」のひとつとして、改正労働基準法において、『年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日、年次有給休暇を取得させなければならない』年次有給休暇5日取得が義務化されました。
 この5日分に関しては、もちろん自分で取得できますが、忙しくて自分から取得できないという場合、使用者(法人)が労働者の意見を聞いた上で、年次有給休暇日を指定することができることになっています(時季指定義務)。5日以上の分は使用者(法人)が指定することはできません。
 もし、使用者(法人)が、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、最大で30万円以下の罰金が科されることになっています。

◆年次有給休暇は買い取りしてもらえないのでしょうか?

 たしかに、年次有給休暇の時効は2年ですので、2年を過ぎてしまった分が消滅してしまいます。しかし、有給休暇の買い取りは労働基準法39条違反となり、原則として禁止されています。なぜなら、そもそも年次有給休暇制度の目的が、心身のリフレッシュを図ったり自己啓発の機会としたりするためなので、休暇を取らずに働いてしまうことは本末転倒となってしまうからです。例外的に買い取りが認められるのは、「退職時に余った有休」「使用期限を過ぎた有休」「法律で定められた日数を超えた有休」の3つのケースです。

◆年次有給休暇をとって良質なケアの提供を!

 2023年就業意識実態調査によると、有給休暇の取得については、「人手不足により言い出しづらい」「仕事量が多くて取れない」「周囲の人に迷惑をかけるから取りにくい」などの声が多く聞かれました。それにプラスして、介護保険サービスには人員配置基準が設定されているため、年5日の年次有給休暇を取得しなければいけないのに、人員配置基準を満たせず取得しにくいという矛盾が生じている場合もあります。
 事業所で年次有給休暇を誰もが確実に取得できるようにするための方法として、①基準日に職場の年次有給休暇計画表を作成する②計画的付与制度(計画年休)を作る③半日単位型制度を作る④積立年次有給休暇制度を作る、などがあります。これらの規程や制度を作るには労使での話し合いが必要です。
 介護はチームケアです。ぜひ気兼ねなく年次有給休暇を取得して、心身をリフレッシュさせたり、自己啓発によって能力やスキルを向上させる時間に使ってみてください。働く人の心と体が元気になれば、おのずと利用者のみなさんに良質なケアを提供することができるのではないでしょうか。

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