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とりくみ Labor policy / Political action

「5年ごとの更新研修は廃止を」第3回ケアマネ諸課題検討会で訴える

2024年6月26日掲載

6月24日(月)、厚生労働省による「第3回ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」が開催され、染川朗会長がWebで出席しました。
染川会長は、示された4つの論点のうち「ケアマネジャーの業務の在り方」「人材確保・定着に向けた方策」「法定研修の在り方」について発言。また、第2回の発言の根拠としたNCCUのケアマネ緊急アンケートの結果をあらためて参考資料として提出し、現場の声を踏まえて意見を述べました。その発言の要旨をご報告します。

1. 本来業務以外の線引きを明確に。新たな業務には報酬評価の検討も
介護保険法第7条に介護支援専門員の定義が明記されているが、それ以外の本来業務ではないことをやらざるを得ない現場の実態があり、提出したアンケート集計結果においても、実に97.3%のケアマネジャーが本来業務ではないと思うことの対応を経験している。
ケアマネジャーが担うべき役割や業務とはどのようなものが考えられるかを検討するにあたっては、本来業務以外への対応が必要となった場合に窓口となる行政機関や対応するものについて、一つ一つの事例ごとに明確にするなどの方策を示していただきたい。
その上で、すべてのケアマネジャーに対し、法律で定められた範囲を超えて新たな役割や業務を担わせるのであれば、報酬としてどう評価するか併せて検討することも必要である。

2. キャリアと処遇のバランスは崩れた状態。人材確保策としてまず処遇改善を
実務経験ルートでケアマネジャーの資格を得るためには、介護福祉士の受験資格を得るまでの3年と介護福祉士としての実務経験5年の、最低8年が必要である。さらに主任ケアマネジャーの資格を得るには、ケアマネジャーとしての実務経験が5年必要で、合計で13年の現場経験が必要となる。
しかし、キャリアを積んでケアマネを目指すと処遇が低下することが課題となっている。2010年のNCCU調査では、ケアマネジャーの平均年収は337万円で、訪問系管理者の平均年収324万円より13万円高かったが、昨年2023年の調査では、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの平均年収390万円に対して訪問系管理者の平均年収は465万円と、ケアマネが75万円も低くなっていた。せっかくキャリアを積んでもこのような状況では、介護従事者が自らのキャリアプランの先にケアマネを描くことはない。実際に「ケアマネジャーになると賃金が減るのでなりたいと思わない」という声も多くある。
これまで、介護職員向けには経験技能を評価することを基本とした処遇改善が実施されてきた。しかし、多くの現場経験を積み、専門的知識・技術を身につけ、難関といえる資格試験に合格したケアマネジャーは処遇改善の対象外とされている。それにより、必要とされるキャリアと処遇のバランスは崩れた状態となっている。受験者数の増加、離職防止、退職者等の職場復帰を通した人材確保のためには、まずは介護従事者が将来ケアマネジャーになりたいとキャリアプランに描く動機となる処遇を確保するべきである。

3. 5年毎の更新研修は廃止し、必要な研修をタイムリーに
NCCUの調査では「費用が高い」「時間が長い」「回数が多い」「事例作成の時間がとれない」など、法定研修の費用と時間に関する回答が上位を占めていた。また、主任ケアマネジャーの過半数が「更新研修の受講要件が厳しい」と回答している。
NCCUに寄せられる労働相談の中には、「事業者主催の従事者向けの研修は任意で行っている研修だから労働時間として取り扱わないと言われた。でも、その研修を受けなければ職務遂行に支障があり、必ず受けなければならないのにおかしい」との相談がある。労働基準監督署は、任意の研修は労働時間として取り扱わなくても差し支えないとしているが、出席しないと職務遂行に支障がある研修を任意とすることは適切ではないと示している。
このような考え方から、ケアマネジャーの法定研修は、ケアマネジメントを行う上で必須であり、研修を受けなければ職務遂行に支障がでる内容と言える。更新研修も、公的サービスである介護保険サービスの質を維持向上に必要な研修であり、ケアマネジャー個人がプライベートの時間を使い、費用を負担するべきものではないと考える。
さらに、今年度から『適切なケアマネジメントの手法』のような最新の情報が更新研修のカリキュラムに加えられたが、ご存じのように更新研修は5年毎なので、一番早く履修した人から全てのケアマネジャーが履修するまで5年かかることになり、更新研修が普及促進のボトルネックになってしまっている。
これらの観点からNCCUは、更新研修については廃止し、それに代わって必要な研修をタイムリーに開催し、可能な限り研修時間の削減すること、研修費用も税や保険料で賄うことを念頭に、国が主体となり研修項目や体系を再設計し、全国共通の項目は国が実施主体になることや、全国どこでも自由な時間に受けられるオンデマンドの研修方式を基本にするなどの対応も進めるべきと考える。

 ◆  ◆  ◆  ◆
同検討会は次回、9月に開催される予定です。
●なお、今回の資料は第3回ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 資料|厚生労働省 (mhlw.go.jp)に掲載されています。
NCCU「ケアマネジャー限定実態調査アンケート」の結果はこちら。

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