11月26日に都内で開催された第19回日本介護経営学会学術大会に村上久美子副会長がパネリストとして登壇しました。日本介護経営学会は、介護事業にかかわる経営学や社会福祉学など関連分野の総合的研究を進めるとともに、その成果を実務に応用することを目的に2005年に設立された団体です。
この日は『まっとうな介護の生産性論を真っ正面から議論する』をテーマに、大会長講演、基調講演、パネルディスカッション、自由演題報告などが行われました。
村上副会長はパネルディスカッションのパネリストの一人として登壇し、生産性向上に関わるNCCUの取り組みとして『介護業界の労働環境向上を進める労使の会』による集団協定締結を報告。中でも46法人と締結した『介護現場におけるテクノロジー導入・活用に関する集団協定』については、締結に至った背景や協定内容に加え、テクノロジー活用に対する介護従事者の思いなども詳細に紹介しました。その上で村上副会長は、テクノロジーの導入・活用の目的は、従事者の負担軽減やサービスの質の維持・向上を第一義とし、テクノロジー導入・活用による「生産性向上」の取り組みを通じて従事者の処遇改善、社会的地位向上に資することにあると提起しました。
その後のディスカッションでは、同じくパネリストとして登壇された厚生労働省老健局の奥山晃正氏から、労使の会の集団協定について「まさに今進めている介護現場の生産性向上の方向性と合致しており、普及していけば大変心強い」とのご発言があったほか、ほかのパネリストからも「生産性向上について労使が同じ方向を向いていると確認する意味でもすばらしい」と評価するご発言がありました。
昨今の生産性の議論においては、「介護は生産性が低い」という思い込みが一人歩きしている一面があります。生産性向上に向けた取り組みはもちろん続けなければいけませんが、介護分野には生産性だけでは測れない価値があることも確かです。
閉会にあたり、主催者からは次のようなあいさつが述べられました。
「介護分野だけが人材不足だとしたら給与を上げたり働き方改革をすればよいが、今は多くの産業で人手が足りない。つまり報酬改善も働き方改革もマストだが、それで人が集まるほど甘い状況ではない。そのような中で考えるべき介護分野の生産性とは、専門職による『直接介護』の時間を増やすこと。配膳や掃除や記録業務といった間接業務を分けたり、いろんな機器を使い、専門職は直接介護にあたることだ。また一方で、介護分野には『測れない生産性』もある。看取りサービスの生産性をどう測れるというのか。介護サービスがあることで家族介護者が働ける、学業ができるという安心感は、生産性に考慮されているのか。介護分野の大きな目的は社会を安全に保つことであり、いわば社会全体の生産性といってもいい。そうした社会的な目的のために働いている、考えているということを、あらためて感じている」。
会場の参加者からは賛同の拍手が送られ、約4時間にわたる学術大会は閉会しました。