2018年度介護報酬改定に向けた議論が大詰めを迎える中、野党6党が関係団体の意見を聴き取るためのヒアリングを実施。NCCUも招かれ、介護保険制度の現場を支える介護従事者の立場から、意見を述べました。
12月1日、民進党、希望の党、立憲民主党、社民党、自由党、日本共産党の野党6党により行われた団体ヒアリングには染川朗事務局長が出席。介護報酬改定に対し現場の組合員から寄せられた意見や「2017年度就業意識実態調査」の結果を示した上で、次のように求めました。
「2009年に介護職員処遇改善交付金が始まり、その後、処遇改善加算になった。制度の仕組みとしては、加算になった時を起点として賃金が上がったかどうかを見ているが、そもそも元々の賃金に差がある場合、低賃金の介護事業者は低賃金のままとどまる。一方、新規参入する事業者にとっては賃金の指標とするものがないので、元の賃金水準を低く抑えれば加算取得をコントロールできてしまう。国は介護に働く人全体の賃金を引き上げようとするのであれば、あるべき賃金水準を国として示すべきだと考える」。
「今、現場では介護事業所が次々と閉鎖、廃止、休止に追い込まれている。人員不足が原因で事業所がなくなったケースも非常に多く、数年前と比べても異常な事態だ。このままでは、特に在宅介護を中心に介護保険制度が崩壊に向かうのではないかと危惧している。労働組合として私達は、これまでは組合員の処遇改善を目的にいろいろな取り組みを進めてきたが、大変残念なことに、この国の『社会保障制度の維持』までも私達が取り組まなければいけないのか、と受け止めている」。
出席議員からは、外国人技能実習制度に関連して、「実習生が6ヶ月現場にいたら人員配置基準に算定して良いということだが、サービスの水準に対する懸念や、現場で働く皆さんの負担について意見を伺いたい」との発言があり、染川事務局長は次のように述べました。
「技能実習という制度を装った労働者確保には一貫して反対している。人材不足の現場で、果たして制度の趣旨に沿って外国の方を教える余力があるのか。介護現場ではコミュニケーションがとても重要であり、日本語が片言の方を育てることには大変な不安がある」。
また、別の議員から出された「処遇が上がれば人は増えるという肌感覚はあるか」との質問に対しては、「私達は『処遇が上がれば人材は増える』と考える」と断言しました。
12月1日 衆議院第一議員会館での野党6党ヒアリング
12月7日には、希望の党によるヒアリングが行われ、染川事務局長と村上久美子副事務局長が出席。NCCUのホームページで実施した「2018年介護報酬改定に関する緊急アンケート」の結果などを基に意見を述べました。
染川事務局長は、「今検討されている改定案の中で、現場の組合員の働き方に影響を与えると懸念しているのは、訪問介護における生活援助サービスの新研修の創設だ。かつてあったヘルパー3級資格は、介護の質を高める目的で廃止になった。それに逆行するかのような新資格の創設は、現場では非常に重い課題になると思われる」と懸念を表明。続いて村上副事務局長が、緊急アンケートの結果を踏まえ、通所介護の基本サービス費や主任ケアマネに関する見直し案について、次のように発言しました。
「通所介護の報酬設定を2時間毎から1時間毎に見直す案が議論されているが、前回の改定で6時間から8時間が7時間から9時間になった際、結果的に7時間から7時間30分の利用者が増加した。今回もそのような懸念があると心配する組合員が多い」。
「主任ケアマネを居宅介護支援事業所の管理者の要件とする案については、『主任ケアマネの研修内容と管理者は別なので反対』との意見がある一方、『主任ケアマネ資格の取得費用を負担してくれるなら賛成』との意見もあった。調べたところ、東京・千葉・埼玉・神奈川・大阪で平均53,700円もかかる。しかし、個人の資格であるとして会社が費用を負担してくれないケースが多いことから、これを手当してくれるなら取得するとの意見が非常に多かった」。
12月7日 衆議院第二議員会館での希望の党ヒアリング
この日は、出席議員から「介護給付費分科会の議論は、来週12月13日に取りまとめられる。仮に、今出されている方向性で押し切られることを想定した場合、介護の現場や当事者も含めて、今後の影響をエビデンスとして取り、早期の是正や防衛策を考えていく必要があると思うが」との発言がありました。
これに対し村上副事務局長は、「生活援助サービスの新研修や主任ケアマネの件について、声を大きくして反対している団体は限られており、現場の私たちは歯痒い思いをしている。ぜひ厚生労働大臣へもっと訴えかけてもらいたいと思うし、私達も検証し、結果を明らかにしていきたいと考えている」と答えました。
2018年度の介護報酬改定に向け、社会保障審議会による改正案や財政審の意見書、内閣による政策案など様々な報道が先行していますが、具体的な改定内容は年明けに決定します。今後の政治動向を注視すると共に、報酬改定後の介護従事者の働き方や利用者へのサービス提供への影響なども検証していく必要がありそうです。