4月22日、「第57回社会保障審議会介護保険部会」が厚生労働省講堂で行われ、委員である陶山浩三会長が出席しました。
今回は、
1.地域の実情に応じたサービスの推進(保険者機能の強化等)
2.その他
を議題として、事務局からの資料説明後に委員がそれぞれの立場から意見を述べました。
陶山会長は、まず「保険者等による地域分析と対応」について次のように発言しました。
「今回の保険者毎の地域分析と対応が、骨太方針(政策の基本骨格)や財政再生アクションプランに基づき結論を急ぎ、一律一方的と言わないまでも要介護認定率や介護費に対し、保険者を数字や時間で追い込んでは行けないと強く感じております。
特に厚生労働省が調査した介護保険事業状況報告書について、記載してはいませんが目標数字を意識させるものに感じます。
第56回社会保障審議会の議題「在宅医療・介護連携等の推進」でも明らかになったように、保険者の推進事業の8つの取り組みでさえ、ご指摘のあったように小規模な自治体ほど遅れ気味に推移しているとされています。これは今回のテーマである地域分析に係わる5事業にも当てはまることだと考えられます。これらの事情を配慮し、国や都道府県は保険者を支えていただきたい。
また、必要以上に適正化という語彙を強調することは、高齢者とりわけ利用者は介護費や要介護認定率の低下することを意識し、一層の不安感にさいなまれる結果となると思われる。
是非、余裕をもった施策を展開し、国民に理解される時間軸で対応を進めていただきたい。」
二つめは、「ケアマネジメントのあり方」について、質問・意見を述べました。
「介護保険制度の要となっているケアマネジャーですが、求められる役割とスキルは、年々増加の一途をたどっています。
しかし、報酬上は扱う利用者の要介護度や特定事業所加算などによって差はありますが全体的には決して高いものではありません。そのような中で、厚生労働省が調査した「主任介護支援専門員の受講者数」を見ると、主任ケアマネジャーの受講者数が年々減少してきているようです。そうなるとケアマネジャーの資格取得者数と就業者数の推移はどうなっているのかを是非調べていただきたい。そしてもしケアマネジャーの必要数が足りているのだとしたら、主任ケアマネジャーの受講者数が減っているのは何故かという視点も明らかになるよう示して頂きたい。また、ケアマネジャーの悩みについても業務等の実態に関する調査が紹介されていますが、ケアマネジャーの処遇改善も論点を支える前提になる大切なポイントと思われます。
私どもで2015年の処遇改善調査でケアマネジャーの処遇を調査したところ、月給者の平均報酬が255,191円でした。これは前年と比べ3,196円プラスとなっています。
しかし、介護報酬処遇改善加算のあった介護職員と比べても増加額は低く、全産業の平均賃金との比較でも7万円以上の差となっており、同時に行った処遇の満足度調査では、少し不満と大いに不満をプラスして73.6%の方が不満に感じていました。理由は、社会的な賃金より低い42%、業務量に見合っていない38%と、仕事と報酬がマッチしていないとの回答が多くなりました。
この調査では希望する賃金も聞いていますが、月額で271,642円という結果となり現状より16,400円プラスという慎ましい額でした。決して法外な報酬を期待しているわけでもありませんでした。
この部会で処遇改善の話をすることは適当ではないかも知れませんが、超高齢社会を乗り切るためには、介護職全体の魅力を上げ、自ら進んで参入してくる専門職を増やし、その切磋琢磨の中から優秀な人材を輩出する必要があると考えます。そのためには処遇の改善は絶対必要条件であると強く主張する。是非、この部会としても介護給付費分科会と連携し介護職員でだけでなく介護従事者の処遇改善に尽力いただきたい。
更に給付管理や書類作成業務は業務遂行に係わる悩みでも圧倒的な負担となっています。第55回社会保障審議会で、その他の課題の中に保険者の業務の簡素化がテーマとして提示されていましたが、現場こそ簡素化が必要であり、この部分は制度の改正を待たずしてもできるところから進めていただきたい。」
次回、同部会は5月25日(水)に開催される予定です。
左・今回、陶山会長は「保険者等による地域分析と対応」と「ケアマネジメントのあり方」について述べました