10月30日、厚生労働省社会保障審議会の第51回介護保険部会が開催され、委員を務める河原四良NCCU顧問が出席しました。「社会保障制度改革国民会議」の報告書で提言されていた、介護保険制度の見直し内容についての集中的な議論が一巡し、今回開催の介護保険部会から2回に分けて、「さらに議論が必要な項目」について議論することになっています。
今回の議題は、(1)予防給付の見直しと地域支援事業の充実について (2)特別養護老人ホームの重点化について (3)その他 が挙げられました。
「予防給付から移行する要支援者に対する事業(案)」では、訪問型・通所型サービスについて、市町村による単価設定を可能とすることが示されています。
この単価の設定について、河原顧問は「サービス単価の設定は介護従事者の賃金に密接に関係するものであり、可能な限り単価設定の設計根拠が明らかになるよう、厚労省から市町村へ指針等を示して頂きたい。以前にホームヘルパーの『移動時間』『待機時間』等の労働対価と介護報酬との関係について厚労省ともずいぶん議論した経緯があり、是非要望しておきたい」と発言しました。
これに対して厚労省事務局は、「単価の設定は、現在の報酬単価を基本にすることを考えているが、報酬自体の設計内訳を示すことは難しいと思う」と回答しました。
さらに、河原顧問は、生活支援・介護予防サービスの充実とともにその量が増加していくイメージ図と、その量にかかる費用を効率的な運用によって抑制しようとするイメージ図の捉え方について、「一見矛盾したイメージ図だが、費用を抑制することは、サービス単価の引き下げに繋がるのではないか。抑制については、検証と具体的なプランを示すことが重要だ」と指摘しました。
「特養への入所を要介護3以上にすべきではないか」とする事務局案については、今回の会合では、要介護1・2であっても、止むを得ない事情等により、特例的に特養への入所を認めることとする柔軟な運用案が示されました。
こうした柔軟な運用案が示されたことを受けて、河原顧問は、「特養入所者におけるのデータによると、年々、自然にあるいは必然的に中重度者へ重点化されている。こうした傾向がある中で、一方では今回、相当柔軟な運用案が示された。この二つのことを考えると、わざわざ特養の入所者を限定するというセンセーショナルな取りまとめをしなくても、『一層の入所審査の厳格化を図る』と取りまとめた方が現実に合っているし、社会の支持も得られるのではないか」と提案しました。
これに対して厚労省事務局は、「特養における要介護1・2の入所者割合は地域や施設によって偏りが見られること、要介護3以上とする原則を打ち出すことはインパクトがあり、また原則化することで、しっかりと入所に対して判断していただけると考えている」と回答しました。
また「その他の議論」では、「居宅介護支援事業所の指定権限を都道府県から、指定都市・中核市以外の市町村にも委譲する」案が示されました。このことは、市町村が従来の『指導・監査』の権限とともに『勧告・命令・指定の取り消し等』の権限も有することになります。
この案について、河原顧問は「現状の実地指導や監査も、市町村によって指摘内容に差異があり、現場の苦情がある。指定権限を移譲することになった場合には、指導・監査とともに、勧告・命令等の行使についての具体的な指針、具体的な基準の作成と徹底をお願いしたい」と要請しました。
同部会は、次回11月14日にさらに議論を深め、その後、年末までに介護保険部会の意見を取りまとめる予定になっています。
集中的な議論が一巡し、今後は「さらに議論が必要な項目」について議論することになっています