12月8日、日本介護クラフトユニオン(NCCU)は後藤茂之厚生労働大臣あてに『新たな経済対策における介護従事者の賃上げに関する要請書』を提出し、処遇改善の対象者を介護職員に限定することなくすべての介護従事者を対象とすることなどを求めました。
※『要請書』全文はページ下のPDFをご参照ください。
岸田文雄首相の看板政策の一つともいえる医療・介護・保育等の現場で働く人の収入増に向けた議論が進んでいます。11月19日に閣議決定された経済政策には、介護・障害福祉職員については来年2月から3%程度(月額9,000円)引き上げる方針が示され、12月6日から始まった臨時国会には、介護分野の賃上げ原資1,000億円を含む今年度補正予算案が提出されました。
NCCUは、国が処遇改善に率先して取り組む姿勢を見せたことについては評価するものの、岸田首相が就任会見や所信表明演説などで再三、格差是正の意欲を示しながら、その引き上げ額が月額9,000円ではあまりに低いと言わざるを得ないと考えます。また、処遇改善の対象者を介護職員に限定することなく、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、事務員等、すべての介護従事者を対象とする必要もあります。
NCCUの要請に対する深澤政務官発言「今回の賃上げが最終ではない」
8日、村上久美子副会長と島卓事務局長は厚生労働省を訪れ、後藤厚生労働大臣あての要請書を深澤陽一厚生労働大臣政務官に手渡しました。
村上副会長は本要請の趣旨を説明した上で、組合員から寄せられた声を紹介しながら次のように述べました。
「今回の処遇改善は介護職員以外の職員も対象として柔軟に運用できることになっているが、原資が1,000億円では、1人あたり9,000円以下になってしまう。従来の処遇改善加算や特定処遇改善加算のように対象者が狭められると職種間での賃金格差が生まれ、多職種協働のチームケアにも支障が生じかねない。居宅のケアマネジャーや福祉用具専門相談員など、これまで処遇改善の対象外とされてきた方々からは、『自分たちは蚊帳の外だ』という訴えもある。実際にケアマネの賃金が介護職より低いケースもあり、かつては憧れの資格だったケアマネになりたくないという人さえいる。このような実態をぜひご理解いただきたい」。
さらに村上副会長は、深刻さを増す人材不足の状況にも触れ、「厚労省の試算では2040年に約280万人の介護従事者が必要で、2019年度から純増69万人追加しなければならないとのことだが、介護従事者が高齢化しているという現実を考慮すれば、NCCUの試算では最低でも新たに190万人の人材確保が必要になる。人材不足から介護保険制度の崩壊を招かないためにも、早急に全産業平均水準の賃金となるよう新たな措置を講じていただきたい」と求めました。
村上副会長の発言を受け、深澤政務官は「介護職員よりもケアマネさんの賃金の方が低いというご指摘もいただいたが、厚労省としては、様々な介護人材の中で介護職員が平均して最も低いという認識の中で、まずそこを引き上げるのだと。特に、今回の賃上げが最終ではなく、まずは介護職員にスポットを強く当てた部分がある。最終的にはさらに介護従事者皆さんの賃金も、経済の成長も含めて考え、上げていくと認識している」と述べました。
また、従来の処遇改善策の対象外とされてきた居宅ケアマネジャー等が置き去りにされているという指摘については、「しっかり受け止め、早期に検討してみたいと思う」と答えました。
深澤政務官は、当初の予定時間を超えてこの度の要請にご対応くださいました。
なお、今回の要請にあたっては、山井和則衆議院議員(NCCU政治顧問)にご尽力いただいたほか、柚木道義衆議院議員(NCCU政治顧問)、田村まみ参議院議員(UAゼンセン組織内議員)もご同席くださり、NCCUの要請を後押ししてくださいました。
左から、島卓NCCU事務局長、柚木道義衆議院議員、深澤陽一厚生労働大臣政務官、村上久美子NCCU副会長、田村まみ参議院議員、山井和則衆議院議員
『新たな経済対策における介護従事者の賃上げに関する要請書』(NCCU).pdf