2月18日、日本介護クラフトユニオン(NCCU)は田村厚生労働大臣あてに『新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種に関する要望書』を提出し、現在はワクチン優先接種の対象に含まれていない在宅系サービスの介護従事者も、高齢者施設等の従事者同様に優先接種の対象とするよう求めました。
※『要望書』全文はページ下のPDFをご参照ください。
昨年末、国は新型コロナワクチンを医療従事者等に優先接種する方針を示し、既に今月17日から国内接種が始まっています。今後は65歳以上の高齢者への接種が行われ、その後は基礎疾患を持つ方、さらに高齢者施設等の従事者についても「感染者及び濃厚接触者をケアする可能性があり、暴露するリスクが高い」などの理由から優先接種が行われる予定です。
しかし、この「高齢者施設等の従事者」に「在宅系サービスの介護従事者」は含まれていません。
その一方で厚生労働省は、2月5日、8日の事務連絡において「病床ひっ迫時に在宅の要介護高齢者が感染した場合について、やむを得ず自宅療養となった場合には、訪問系サービスの必要性を再度検討する」「在宅系サービスについて、感染の懸念があることはサービスを拒否する正当な理由には該当しない」として、介護サービスを継続的に提供するよう求めています。
このように、感染者への対応を在宅系サービスの現場に求めるにも関わらず、在宅系サービス従事者をワクチン優先接種の対象外とすることは到底受け入れられるものではありません。
18日、染川朗会長、村上久美子副会長、島卓事務局長は厚生労働省を訪ね、田村厚生労働大臣あての要望書をこやり隆史厚生労働大臣政務官へ手渡しました。
染川会長は、NCCU調査で約3割の組合員がコロナ禍でのメンタル不全を訴えていることに触れ、「介護従事者はこれまでも不安と緊張感の中で業務に携わってきたが、その不安をさらに助長するような事務連絡が出され、不安が憤りに変わっていくのではないかと心配している。在宅介護の現場はコロナ禍以前から人手不足の状況で、求人倍率が15倍を超えるなど、だれかが休むとサービス提供を継続できなくなるほど追い込まれている。これ以上は限界という段階に達していることをご理解の上、善処願いたい」と求めました。
続いて村上副会長が要望書の内容と共に在宅系サービスの現状を説明。「高齢者施設はクラスター対策としてワクチン優先接種の対象とされているが、在宅系サービスである通所介護、看護小規模多機能型居宅介護、小規模多機能型居宅介護などでもクラスターは発生している。また、在宅系サービスの従事者は平均年齢が比較的高いため、心配するご家族から『仕事を辞めてほしい』と言われるなど、離職者の増加も懸念される」と述べ、「従事者とご家族、ご利用者とご家族の不安を軽減するためにもワクチン優先接種の範囲に入れていただきたい」と訴えました。
NCCUの要望に対し、こやり政務官は次のように述べました。
「ワクチン接種を昨日開始したところだが、ワクチンをどれだけ確保できるのか、いつからどれだけの数量を配分できるのかということは、なかなかお示しできない状況にある。今は全体としての優先順位をつけざるを得ず、今後、次の優先順位を決定するかどうかも含めて、今の段階では申し上げられない。各方面からのご要望があり、あらためて整理していかなければいけないと考えている」。
こやり政務官の言葉を受け、染川会長は、「今の段階で難しいことは理解しているが、今後、ワクチン確保が進んだ時点で、早くその先の対応を決めていただきたい。少なくとも、在宅系サービスの従事者が一般の方々と同じ接種時期になることはないようにしていただく必要がある。行政は介護事業所数や職員数を掌握しているはずで、その点では大きな混乱が生じることはないと思う」と重ねて求めました。
今回の要望書提出には、田村まみ参議院議員(UAゼンセン組織内議員)、山井和則衆議院議員(NCCU政治顧問)、柚木道義衆議院議員(NCCU政治顧問)もご同席くださいました。「同じ介護従事者の中で分断が起きるのは避けなければいけない」「介護サービスを受けているご高齢者ご自身が、『安心して介護サービスを利用したいからワクチン接種をしてほしい』と求める声もある」「在宅介護の現場でも、従事者が罹患したら横のつながりで複数の高齢者に感染させてしまう可能性が高い」など、NCCUの要請を後押ししてくださいました。
NCCUは、国政の場でも引き続き対応が図られることを求めていきます。
中央・・・要請書をこやり隆史厚生労働大臣政務官(左から5番目)に手渡す染川朗会長(右から4番目)
左より・・島 卓事務局長、柚木道義衆議院議員、村上久美子副会長、田村まみ参議院議員
右から3番目山井和則衆議院議員、右から2番目金子文幸政策副部長